
電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類について、電子データによる保存を認めた法律です。
電子化の促進に伴い、内容の一部が2022年1月に改正予定となっています。
今回は、電子帳簿保存法の内容や、改正のポイント、運用見直しの方法についてまとめました。法改正に伴い、社内の経理体制をどのように変化させていけば良いのか、解説していきます。
目次
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは、国税関係の帳簿書類を電子データで保存することを認めた法律です。
例えば、決算書類や、仕訳帳など、紙媒体での保存が原則とされていたものなどが該当します。
つまり、電子帳簿保存法や、経理や会計面に親しみ深い法律であるということです。
電子帳簿保存法でデータ保存できる帳簿や書類
電子帳簿保存法の対象となり、データ保存できる帳簿や書類は、下記があります。
①仕訳帳
②総勘定元帳
③現金出納帳
④賃貸借対照表
⑤損益計算書
⑥見積書/発注書
⑦契約書
⑧請求書
⑨領収書
⑩電子契約データ
⑪メールデータ
⑫ECI取引
このうち、①~⑨は税務署長の承認が必要ですが、⑩~⑫は申請不要です。
電子帳簿保存法改正のポイント
承認制度の廃止
これまで、電子帳簿保存法で電子データ保存を行おうとすると、導入を希望する時期の3ヶ月前までに税務署へ申請が必要でした。
つまり、社内で電子化をする要件を決定してから実際に導入するまでに半年から1年くらいの準備期間が必要だったのです。更に、申請の却下通知が届けば振り出しに戻ることもありました。
しかし、2022年1月の改正では、国が定める基準を満たし、電子帳簿保存法に対応した機能を備えている経費生産システムであれば、税務署への申請不要で速やかに電子化の対応が可能になります。
タイムスタンプ要件の緩和
タイムスタンプとは、電子データが作成された時間の証明書です。これまでは署名後3日以内にタイムスタンプを押さなければなりませんでしたが、これが最長2ヶ月に延長されます。
電子データは、データ上で改ざんすることができてしまうので、作成された日時移行に改ざんされていない事の証明に使われます。
これからは、電子データの修正や削除の履歴を残せるシステムを利用することを条件に、最長2ヶ月以内にタイムスタンプを推すことができるようになります。
適正事務所利用権の廃止
適正事務所利用権とは、電子データの事務処理等に関して、不正防止を目的に厳重なチェック体制と定期的な確認が行われていたものです。
定期検査では、検査実施日まで、原本の破棄ができなかったので、対応に遅れが生じていたケースも有りました。
その点、今後は、適正事務所利用権が廃止されるので、原本はスキャナ後すぐには気ができるようになります。
検索要件の緩和
今回の改正により、検査要件が年月日、金額、取引先のみになるなど簡素化されます。
これまで、電子データを保存するには、定期検査として内容を閲覧したり、データ管理ができたりするよう検索機能を確保する必要がありました。
検査要件も複雑なことでハードルが上がっていましたが、3つの検査項目のみになるので、検査にかかっていた時間も削減することができるようになります。
保存期間は7年
税務上、帳簿書類の保管は7年間と義務付けられています。
紙ベースでの保管が難しい帳簿書類も必ず7年間は保存しなければなりませんでした。
しかし、電子データでの保存ができるようになると、電子上で保存すればよくなるので、保管庫の管理が必要なくなります。
電子帳簿保存法改正の目的
電子帳簿保存法改正の主な目的は、電子化を促進するものです。
これまで、電子帳簿保存法における、承認方法や、管理方法が煩雑で電子化が進まないといった背景が有りました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大などの影響もあり、電子契約等が急激に普及してきたことも相まって、電子帳簿保存法の改正に至ったと考えられます。
電子帳簿保存法に必要な手続き
申請書の提出
電子帳簿保存法を適用するには、電子保存を始める日の3か月前までに申請書を提出する必要が有ります。
提出場所は、所轄税務署長等で、下記の書類を揃えなければなりません。
・国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書
・電子保存で使用するシステムの概要を記載した書類
・電子保存を行うPCに関する事務手続きの概要を記載した書類
・その他参考書類
適用を受けるための要件
要件 |
帳簿 |
書類 |
記録事項の訂正・削除を行った場合の事実内容を確認できること |
○ |
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通常の業務処理期間を経過した後の入力履歴を確認できること |
○ |
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電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認できること |
○ |
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システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)を備え付けること |
○ |
○ |
保存場所に、電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できること |
○ |
○ |
取引年月日、勘定科目、取引金額その他のその帳簿の種類に応じた主要な記録項目により検索できること |
○ |
○ |
日付又は金額の範囲指定により検索できること |
○ |
○ |
二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること |
○ |
電子帳簿保存法とともに検討すべき「経理代行」
電子帳簿保存法の改正により、申請が通りやすくなるので、電子化を検討する企業が増えてくるでしょう。
しかし、電子帳簿保存法を適用するには、法要件を満たした「クラウド型経費清算システム」などの会計システムや、それに対応した経理代行を利用する必要が有ります。
クラウド型経費精算システムとは
クラウド上で会計帳簿などの経理業務を行い、記録をしていくことができるシステムです。
2022年改正予定の電子帳簿保存法では、承認が1部不要になりますが、このクラウド型経費清算システムを導入していないと、承認がおりません。
領収書のデータや、請求書のデータなどをシステム上で閲覧、保存することができるので、電子化を検討している方は導入必須です。
経理代行とは
一方、電子帳簿保存法の申請や、クラウド経費精算システムの導入とともに検討すべきなのが、経理代行です。
経理代行は、その名の通り、企業やお店の経理業務を代行、アウトソーシングできるサービスになります。
クラウド経費精算システムなどを利用し、かつ最新の法要件にのっとって業務を遂行してもらえるため、法改正に迅速に対応することができます。
電子帳簿保存法改正に伴い経理代行を利用するメリット
法改正に迅速に対応できる
1つは、法改正に迅速に対応できるという点です。電子帳簿保存法自体が制定されたのは1998年ですが、2005年、そして2022年と何度か内容が改正されています。
そのたびに、法要件に合わせて申請書をしなければならなかったり、対応をしなければならなくなったりするのです。
法に詳しい人材が居なければ対応が難しい可能性もあるため、経理代行を利用することで、プロフェッショナルが迅速に対応してくれます。
申請方法等をレクチャーしてくれる
経理代行を利用することで、法改正がされても、電子帳簿保存法の申請方法のレクチャーやサポートをうけたりすることが可能です。
1人で申請をしようとしても、分からない点や、不安なまま提出して、申請が通らない可能性もあるでしょう。
その点、プロフェッショナルからサポートをうけられるので、申請を受理される確率が高くなります。
万全な状態で電子化を促進できる
経理代行は、経理のプロフェッショナル集団のため、法改正がされても、万全な状態で電子化ができるのが利点です。
自社で経理業務を行っている場合、法改正にどのように対応すればよいのか、分からない点もあるかもしれません。
その点、電子化を促進するにあたり、プロの手を借りながら進められるので、万全な状態を保つことが可能です。
電子帳簿保存法改正に伴い経理代行を利用するデメリット
一方、デメリットとしては、2022年1月に法改正がされるので、導入を急がなければならないという点があげられます。
最短で経理代行を導入したい場合は、各サービスに問い合わせて、いつまでに利用できるか確認するとよいでしょう。
電子帳簿保存法に関するQ&A
Q:クラウド会計サービスやサーバーを海外に置くことはできますか?
A:海外でも利用可能です。電子帳簿保存法では、場所が定められていないのと、当該電磁的記録はクラウドの等の保存場所に保存がされているものとして取り扱われるからです。
Q:記帳代行を利用している場合も、申請できますか?
A:申請可能です。ただし、国税関係帳簿の作成については、書面であるか、電磁的記録であるかに関わらず、課税期間中に記録せず該当期間終了後にまとめて記帳するのは認められません。
Q:自社で使用している会計ソフトが法要件を満たしているか分かりません。
A:JIIMAによる要件適合性の確認や認証を受けることで、会計ソフトが要件を満たしているか確認できます。
まとめ
電子帳簿保存法の改正により、今後ますます電子化が進んでいくことが予想されます。
データをクラウド上で保存する機会が多くなることで、更に要件が追加される可能性や、別の承認制度が設けられる可能性はゼロでは有りません。
いつでも、法改正に対し適切に対処できるよう、経理は経理代行などのプロフェッショナルに委託するのがおすすめです。