経理業務は、経営上欠かせない業務ですが、その中でも多くの時間を要するのが記帳業務です。
慣れている経理担当者であればいいですが、担当者が退職したり異動することになってしまう場合、他にできる人がいなかったり、新しい人へイチから引き継いでいく必要があります。
こうした場合に、新しく人材を雇って教育していくのであれば、そのタイミングで記帳代行を検討することも一つの手段です。外部に委託するのは不安だったり、費用がかかるのでは、と心配する経営者も多いので、今回は「記帳代行」の特徴やメリット、注意すべき点について詳しく解説していきます。
経理業務をどうするか悩んでいる経営者、個人事業主の方などは、ぜひチェックしてみてください。
目次
記帳とは?
「記帳」は、会社が行った取引の記録を帳簿につける作業のことです。なお、ここで言う「取引」とは、会社同士の契約が成立したという取引ではなく、会社の「財産が増減した」ことを言います。
そのため「商品の購入」「商品の仕入れ」「商品の販売」のように、会社の財産が増えたり減ったりすることに関する事象は、すべて「取引」となります。取引の種類によって、記録するための勘定項目を設定し、この勘定項目ごとにすべての取引を帳簿につける「仕訳」を行います。
2014年から記帳業務は義務化に
2014年の税法改正に伴い、すべての白色申告者に記帳や記帳の保存が義務付けられるようになりました。
以前までは、この記帳業務もすべての事業者が行うのではなく、対象が「前々年分あるいは前年分の事業所得や不動産所得または、山林所有の合計額が300万円を超える方」という場合に限られており、記帳の保存義務に関しても一部の方だけという制限がありました。
しかし記帳がされていないと、税務調査などを行う場合に透明性が担保できず、不正に気づけないなどの支障が出てきたためです。
記帳代行とは
「記帳代行」とは、帳簿作成などの記帳業務を代行して行ってくれるサービスのことを指します。社内で発生する帳簿の記帳作業などは、どうしても人の手で作業が必要な部分が多く、専任の経理担当者がいなかったり、個人事業主など人手の少ない中で担当するには難しいため、この作業を代行サービスに依頼することで効率化を図ることができます。
記帳代行の多くは、税理士や会計事務所が依頼の一環として行っていることが多いですが、最近では、記帳代行を専門とした代行サービス業の会社も増えてきました。以前より多くの記帳代行サービスが登場しているため、依頼先を選ぶ際は、いくつか比較検討して自分にあったサービス会社を選ぶようにしましょう。
記帳代行に依頼可能な業務
会計ソフトへの入力
記帳代行サービスの主な業務としては、会計ソフトへの取引記録の入力作業です。
年度末に決算申告を行うため、日々の取引状況を帳簿に記録しなくてはならず、取引の様子がわかる領収書や請求書、納品書をはじめ、通帳のコピーなどを社内や取引先から預かって、会計ソフトへ一つ一つ入力していきます。
取引の記録を、正しい勘定科目に仕訳ないといけないので、経理や簿記の知識も必要となってきます。さらに取引件数によっては、日々の入力数、仕訳数も増えていくので、作業にかかる時間も長くなってきます。記帳代行サービスであれば、専門の知識を持ったスタッフが代行するので、効率よく正確に入力が可能です。
帳簿作成
記帳代行サービスには帳簿の作成業務も含まれることがほとんどです。帳簿作成といっても、代行サービスで作成可能と言われているのは、以下のような帳簿になります。
・現金出納帳
・預金出納帳
・売掛残高一覧表や買掛残高一覧表
・試算表
・総勘定元帳
法律上、会社の決算報告は年に一度の実施が定められていますが、多くの企業では月次、四半期、半期など定期的に決算を行っていることがほとんどです。年に一度の決算では、数値の把握が難しく、大きな差異が発生してもリカバリができなくなるなどのリスクも高くなるためです。
月次決算を行うことによって、日々の決算処理のミスを早めに見つけて修正することができ、あとから大きな損失となることを防ぎます。
記帳のセルフチェック
記帳代行では記帳が終わった後のセルフチェックも行ってもらえます。業者によっては「記帳支援サービス」として、会計ソフトへの入力やチェックを行ってもらえないものもありますので、確認が必要です。
代行会社に記帳のセルフチェックを行ってもらえればミスにも早い段階で気が付いてもらえるので安心でしょう。
ミスを確認・修正
記帳代行では、記帳や仕訳のミスがないかを確認し修正まで行います。記帳業務も専門知識が必要な業務になるので、従業員などではミスに気が付かない可能性もあるでしょう。
その点、ミスの精査から修正までしてもらえる記帳代行は、ヒューマンエラーを防止するのにも最適です。
経理代行と記帳代行の違い
経理代行サービスの一つ
記帳代行は経理代行サービスの中の一つになります。経理代行サービスは、経理業務全般を代行するものなので、経理業務の中には、記帳代行が対応する「会計ソフトへの入力業務」や「帳簿作成」なども、そのサービス内容に含まれる形です。
記帳代行のみ依頼するのか、経理代行から依頼するのか決めるためには、現状の経理業務野中で、どこからどこまでをアウトソーシングで依頼するのか、業務整理を行う必要があります。日々の入力業務に追われて、メインの業務に支障が出てるのであれば、記帳代行サービスを利用するだけで、業務負担の改善に繋げることができます。
リソースをひっ迫している業務を洗い出して、適切なサービスを選ぶことが重要です。
経理代行の方が費用が高額
また経理代行サービスと、記帳代行サービスでは、費用面にいおいても違ってきます。
記帳代行サービスは、経理代行サービスと比べて対応できる業務の範囲が狭いこともあって、低料金で代行サービスを依頼することが可能です。一般的には、月間の仕訳数に応じて料金が決まっていることが多く、相場としては1万円~3万円前後と言われています。
一方、経理代行サービスは、記帳代行も含む幅広い経理業務に対応したサービスになります。そのためサービスの内容によって、複数のプランを設けていることもあり、記帳代行・請求書発行・給与計算など一般的なサービスで、月4~5万円ほどかかります。
また税理士事務所が提供しているサービスの場合、通常の経理業務に加えて確定申告や経営コンサルティングなども依頼することができますが、費用は月々15万円ほどにはなるようです。
記帳代行のメリット
正確かつ迅速に対応できる
記帳代行を利用することで、会計処理を正確かつ迅速に対応することができます。記帳代行を専門に行っている会社や、税理士事務所、会計事務所には、経理業務の経験や知識を持ったスタッフが多数在籍しているため、素人が初めて記帳するよりも早いのです。
こうして、時間のかかる記帳業務や経理業務を外部に依頼することで、会社の売上に繋がる営業や開発業務に時間を割くことが可能になります。
コスト削減が可能
記帳代行サービスを利用すると、採用コストや教育費などの人件費を削減することができます。社内において記帳業務を主に行うのは、経理担当者などになります。ただし専任の経理担当者を雇う余裕がなかったり、退職などで急遽欠員が出てしまった場合など、は困ってしまうでしょう。
専任の経理担当者を雇う場合、給与などでも月間20~30万円かかるほか、採用までにかかる費用も別途発生します。その点、記帳代行サービスであれば、月々数万円のランニングコストで済むことになります。
節税対策
記帳代行では、税理士などに節税対策に関してのアドバイスを受けることができます。というのも、記帳代行を利用すると会社の会計情報の正確性が高くなり、年間通しての利益や納税額を予測することができるようになります。これにより、事前に節税対策を考える余裕ができるわけです。
また税務調査などが入る際、税理士に記帳代行を依頼しておけば、早いうちに税務調査に向けた準備を行ってもらうことができるため、実際に税務調査が入った場合にも、スムーズな対応ができるようになります。
記帳代行のデメリット
税理士がいないと税務申告ができない
記帳代行では、税務申告まで依頼することはできません。
確定申告時などの税務申告は、税理士のみが業務として行えないよう定められているため、記帳代行サービス会社に依頼する際は、提携している税理士がいるか確認しておくことをおススメします。
違法業者がいることも
近年増加している記帳代行サービス業者ですが、その中には必ずしも優良とはいえない業者も潜んでいます。税理士の提携がないにも関わらず「税務申告まで可能」といって、違法なサービス提供を行う業者もいますので、しっかりと見極めましょう。
格安プランがあると聞いて依頼すると、実は重要な部分はすべてオプションとなってしまい、結果的に高くついてしまうことも起こりえるので、料金プランと対応項目はしっかりと確認のうえ決めるようにしましょう。
まとめ
記帳代行を利用するのにおすすめな方は、
・現在記帳業務が業務負担になっている方
・優秀な経理担当がいない方
・経理担当に多大なコストをかけている方
です。
専門的な知識を持ったプロに依頼できる安心感と、人件費をはじめとしたコスト削減、従業員リソース確保にピッタリの「記帳代行」は、これからの会社経営に有効的なサービスと言えます。
アウトソーシングで外部に委託できるものは、どんどん委託をして、社内の利益を上げることに最大限に注力できる環境を作っていきましょう。
記帳代行サービスは、今やさまざまな会社で提供されています。どこに依頼していいのかわからないという方は、まずはKANBEIにご相談ください!
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